ルネ・エルス クランク&CW(レプリカ)  René Herse

言わずと知れた、ルネ・エルスのクランク&CWのレプリカ品。オリジナルは、自転車部品の中で、伝説的に
なったもののひとつであろう。円の要素がきわめて多い自転車において、さらにバランスよく円のモチーフを
重ねたこのフォルムが名品となるのは、非常に自然であるとも言えるが、それは三つの円という主題に依る
ところが大きいだろう。

3という数字は、特別な意味を持つ。今日、人々が考える多くのことは、対比される二つの原理を対象とした、
二元論に傾く場合が多い。勝つか負けるか、善か悪か、生か死か、精神か肉体か、主観か客観か。

人々がそういう見方に傾いたのは、千年単位で考えれば、比較的最近のことだという見方がある。存在をより
全体的に捉える立場や、中世以前の哲学的見方は、二元論ではなくて、三元論だったらしい。三位一体とは
そういうことである、という論もあり、人間という存在が精神と肉体に分断されているのは、魂という、両者の仲
介者が忘れ去られているからだろう、という見方もあるようだ。

単車乗りだけでなく、広く二輪の旅人にとって名著であると思える、ロバート・M・パーシグの『禅とオートバイ
修理技術』も、この問題を扱っている。パーシグは、それこそオートバイを修理するときの心の状態について
も言及している。だから、本稿のようにルネ・エルスのクランクから話が飛躍しても、それほど突飛ではない
のかもしれない。

レプリカという物体のあり方にも、実に面白い面があって、こちらはフィリップ・K・ディックあたりにご登場願い
たいところなのであるが、それはまた別項を書く機会に譲ろう。



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